Kenshi_JP公式

「Kenshi」の開発会社、Lo-Fi Gamesの発信する情報を日本語にてお届けします

「Kenshi 2」翻訳に向けた新たな第一章

初めに

「Kenshi」の翻訳はLo-Fi Gamesのリード・ライターであるNatが管理・推進し、後に日本語翻訳を担当したMeg (日本語PRとコミュニティ運営担当者。現在は翻訳チームのリーダー) によりサポートされました。現在、両者は「Kenshi」の翻訳過程で得た経験を元に、英語圏以外でのプレイヤーの皆さまにも「Kenshi 2」を原語と遜色なくプレイしていただけるよう、翻訳やそのプロセスの改善に勤しんでいます。

今回のコミュニティ・アップデートでは、その両者から、「Kenshi 2」翻訳に向けた改善点や、各国語の翻訳に関わる開発計画などについて話を聞きました。

翻訳する過程で最も難しいのは、自分が話せない言語の翻翻の質や進捗の確認ができないことです。翻訳者たちが丁寧にきちんと作業していると信じる他ないのです。他の仕事をしながら、それを管理するのはとても難しいことでした

と、「Kenshi」のライターとしての仕事の傍ら8か国語の翻訳を進めたNatは話しています。

「Kenshi」のライターの仕事には数多くの複雑な要素が絡みます;それを『「Kenshi」の癖』と呼んでいますが、「Kenshi」のテーマや世界観に齟齬が出ないよう把握するだけでなく、ワードスワップが文法的にどのように反映されるか理解したり、文章の流れをチェックしたり(状況に応じて異なるダイアログが表示される際には、数多くの異なる組み合わせが必要となり、気を付けていないと文章が非常にぎこちなくなる可能性があるため)、その過程は新しいライターが加わった際には、数か月間のトレーニングを要するほどです。「Kenshi」には通常とは異なるレベルの思考が必要となるため、実際の創作は半分くらいで、後の半分は「Kenshi」特有の可笑しな技術に頭を悩ませることになります。
このような状況で、ライター向けレベルでのトレーニングを翻訳者たちに行えず、またその確認もできないのは、歯痒いことです。そのため「Kenshi 2」ではMegが翻訳者向けに時間を掛け、自らも翻訳することで、共に翻訳作業を進め、さらに事細かにそれらの問題点を共有し、彼らと一緒に働いてくれている事をありがたく思っています。

これはワードスワップがきちんと反映されていない例のスクリーンショットです。このような間違いが起きないよう、FCS(社内開発ツール)に「ワードスワップの結果を見る」機能を付け加え、実際に表示される文章を確認することが出来るようになりました。このような間違いが起きないよう、技術的にもワークフローの改善がなされています。

「Kenshi」翻訳を振り返る

「Kenshi2」の翻訳に向け、私たちは「Kenshi」での問題点を集積し、それを知識として蓄えてきました。その際に最も改善の余地があったのが、「内容を把握すること」と、「協業すること」の2点です。翻訳者たちは、基本的にその言語におけるゲームのライターです。彼らは、その母国語での知識を駆使して、その言語で最も適切だと思われる言葉を選択していきます。それには、直訳なのか、意訳なのか、また名詞はカタカナ表記にするのか、それとも訳した漢字表記にするのか、等が挙げられます。

協業すること

「Kenshi 2」はまだ開発中のため、翻訳者がその雰囲気やゲーム内での内容を把握しきれていないと、誤訳や誤った語調に繋がってしまいます。翻訳者たちはまた、テーマや目的を理解し、ゲームデザインに関わる情報を伝え、プレイヤーの経験を想定されている気持ちにつなげられるよう、また、ヒントなどから行動に移してもらえるよう翻訳する必要があります。

翻訳者たちは、プレイヤーの取る行動によって、ゲーム体験そのものが異なってくる翻訳に関わっているため、ライターは、プレイヤーの行動がどのような結果を招くことになるのか明白にする必要があります。翻訳者が文章が与える影響を理解していないと、プレイヤーがゲーム内での大きなチャンスを逃してしまったり、その文章を理解できなかったがためにペナルティを受ける可能性も出てくるからです。

基本的に、プレイヤーがそのゲームプレイを楽しく思えるかどうかは、素敵な言葉や文章に寄るわけではありません。それを踏まえ、私たちは翻訳を開発後に行う作業としてではないく、開発プロセスの一部と見なし、頻繁にミーティングを行ったり、トレーニングやQ&Aを行っています。今回翻訳作業は、開発と同時に行われているのです。

内容を把握すること

実は「Kenshi」開発中に各国語版を出す計画はありませんでした:当時4名から6名で開発していたプロジェクトとしては、それはあまりにも大変なことであったからです。ゲームを他言語に翻訳することは、ヨーロッパ各地でゲームが人気を博し、プレイヤーによる翻訳MODが出始めてから計画されました。ですから、翻訳のプロセスは開発の最後に付け加えられ、数社の翻訳会社にゆだねられ、何もドキュメント化されていない状態で進められました。

「Kenshi 2」ではビジュアル的にも使いやすい社内wikiが用意され、チームのメンバーに共有されており、必要に応じて簡単にアップデートすることもできるようになりました (伝承などは開発中に常に変わっていきます)。

翻訳者たちは、wikiから世界情勢の背景や文化を理解し、また、その地域別の会話スタイルや、スラング、特徴や主要情報、名称やゲームのテーマなどを知ることが出来ます。翻訳者にはまた、各キャラクターの性別、性格、役割や善悪等の特徴など非常に有益な情報も提供されています。

また、名称のシステムなども改善され、それにより内容がわかり易くなったり、作業の順番を付けやすくなりました。デザイン・ドキュメントやガイドも用意され、何よりも翻訳メモを付加えられるようになったのは大きな改善点でしょう!これにより、ライターは直接FCSの翻訳モードのダイアログやGUIデータ等に、翻訳者に必要なメモを残すことができるようになりました。メモの内容としては、内容の意味合いや、話し相手の地位、言葉の奥に隠された意味や、わざと書かれたスペルミスや発音ミス、冗談やユーモアなど、翻訳では失われてしまう可能性のある内容への注意が書かれています。

翻訳者がゲームの雰囲気や目的が判らないまま翻訳してしまうと、その意味合いや語調が簡単に誤訳されてしまします。翻訳者に情報を提供すればするほど、翻訳の精度も上がります。ライターの毎日の作業として1)ウィキをアップデートすること、2)メモを残すことは、習慣化されるようになりました。

翻訳チーム

「Kenshi 2」の翻訳は、「Kenshi」の翻訳を担当したPaola (スペイン語)、Marie (フランス語)、そして、勿論Meg (日本語)によって1月にスタートしました。翻訳開始当初の様々な問題(データ消失、翻訳メモの欠如、データのエキスポート問題、ソフトウェアのクラッシュ)も解決してきたため、今年中には他言語の翻訳も開始する予定です。

「Kenshi 2」では、昨年12月に「Kenshi」の日本語改良版の翻訳を完了したMegが翻訳チームのリーダーとして、自らも「Kenshi 2」の翻訳をしながら、他の翻訳者たちのトレーニングやサポートを行っています。Megは、彼女自身が「Kenshi」のファンとして長時間プレイしてきただけでなく、相当数の「Kenshi」ビデオを視聴していることと、過去に何度もMOD制作者たちや翻訳者たちによって翻訳されてきた「Kenshi」を再翻訳した事で、ユニークな視点を持って翻訳に望める立場にあります。

先達者たちの翻訳を辿ることにより、彼女は過去の問題点を把握し、それらの改善策を「Kenshi 2」の翻訳プロセスに取り入れるよう提案してきました。彼女はまた、プレイヤーとして、また日本語でのコミュニティ担当者として「Kenshi」を熟知しており、それが内容の把握を設定する上で役に立っています。彼女の「Kenshi」翻訳の際に向き合ってきた問題点などはこちらのGame*Sparkの記事にて読む事ができます。

私は「Kenshi」の翻訳には、ゲームリリース後に関わったため、その世界観やダイアログは、熟知していた方だと思います。また、翻訳する時点で、ファンによる素晴らしいwikiが英語でも日本語でも用意されていたため、それらを参照することができました。

「Kenshi 2」では、開発段階から翻訳に関わらせて頂いているため、翻訳者の作業工程を大きく変える要素や機能の改善を提案させてもらっています。社内wikiや翻訳者に向けたライターのメモ、FCSの改善などを経て、「Kenshi 2」の翻訳作業は、既にリリースされている「Kenshi」の翻訳作業と遜色なく、また時として、より作業しやすくなっています。これもライターや技術チームが翻訳を開発の重要な工程のひとつと見なしてくれているからだと思います。

また、翻訳の初期段階から、PaolaやMarieと一緒に作業を進められるのも素晴らしい事です。彼女たちと一緒に翻訳メモやFCSに取り入れてもらいたい要項などを提起することができるからです。私たちは、どんなに小さな問題でも包み隠さずライターや技術チームに共有するようにしています。それは問題が現時点で解決されれば、この先に加わって来る翻訳者たちがよりスムーズに作業できるようになるからです」。- Meg

 ケース・スタディ:キャットクローラー

現時点で翻訳されている3か国語につき、「Kenshi 2」の「キャットクローラーのハンドブック」の翻訳と、翻訳者の意図するコメントを以下ご紹介します。この翻訳はキャットクローラーというゲームが実際には存在しないことから、翻訳者の想像力に頼らざるを得なく、「Kenshi」独自の言葉やフレーズが満載で、原文自体も訳の分からないものであるのことが特徴です。また、キャットクローラーは「Kenshi」にも「Kenshi 2」にも共通して登場するゲームであることから、言葉の齟齬がないように翻訳する必要もあります。

英語の原文

“The first rule of Catcrawlers: Don't try to play Catcrawlers. No, you've gotta breathe Catcrawlers, feel it in your bones. Don't even attempt to tug those digits 'til you've charged those wedgers, because you sure as hell can't lick a SPADE 'til you've understood the stone die on a spiritual level. Yes, the depth of Catcrawlers will be beyond most in these outlands. So, let's get started...”

スペイン語

"La primera regla del Arrastra-Cat: No intentes jugar a Arrastra-Cat. No, tienes que respirar Arrastra-Cat, presentirlo, intuirlo cual corazonada. Ni se te ocurra tirar de esos dígitos hasta que hayas cargado esos nipeludos, porque fijo que no puedes lamer una COPA hasta que hayas comprendido que la piedra muere a un nivel espiritual. Sí, la profundidad de Arrastra-Cat llegará mucho más allá de estas lejanas tierras. Así que pongámonos manos a la obra…"

Kenshi」を翻訳するのはとても楽しいですが、難しくもあります。幸いにもライターが、たくさんのヒントや作り言葉の説明、擬音語やその他、彼らの頭から創造されてくる内容を説明してくれるので、助かっています。この翻訳では、wedgerという作り言葉に私の作った言葉、nipeludoという言葉を当てています。これは、私の世界で使っている言葉で、「Kenshi」のスペイン語プレイヤーへの私からのプレゼントです。 - Paola

フランス語

“Première règle de la Course aux Cats: N'essaye pas de jouer à la Course aux Cats. Non, il faut que tu la respires, qu'elle coule dans tes veines. Ne tente même pas de mélanger des doigts avant d'avoir balayé les boulettes, parce que jamais de la vie tu n'arriveras à lécher un CARREAU avant d'avoir compris le lancer de dés à un niveau spirituel. Oui, la subtilité de la Course aux Cats sera inaccessible à la majorité sur ces terres sauvages. Alors, commençons…”

「Kenshi」の翻訳は常に最大限に頭を動かし、クリエーティブな挑戦を課してくるため、とても面白いです!翻訳の中で、最も難しく(面白い)のが、作り言葉と想像力が必要なもので、意味はそのままに、原文の効果を残しつつ、直訳を避けるようにクリエーティブになる必要があります…キャットクローラーのハンドブックはそのバランスを保つのが難しい最たるものです!

この文章を翻訳する際には、原文のエッセンスを保つことに注力しました。これは真面目なゲームのハンドブックではありますが、実はナンセンスで馬鹿らしい(そしてちょっと卑猥な)戯言です。翻訳の際には、ウェブサイトのカジノ・ゲームで使われる辞書からカードの言葉を探し、真面目な言葉と意味のない言葉をつなげ、英語でも可笑しな、訳の分からない文章をフランス語でも表現しています。

例えば、「lick a SPADE」は「lécher un CARREAU」と訳されていますが、これは、「舐める(lick)」という可笑しな言葉を残しつつ、「鋤」をフランス語の「ダイアモンド」と「窓」という両方の意味を持つ言葉にに代え、よりカードに近い言葉にし、コミカルな様子を表現しています (フランス語の「鋤」ではこれは表現できませんでした)。- Marie

日本語

「キャットクローラーの第1のルール:それはプレイしないことだ。キャットクローラーに心身を預け、直感に導かれる。幻の石を求めて『鋤』で深掘りする虚しさを実感するまで、それは無理だと心得よ。その奥義の境地に達するまで、勝負をつけるなど、もっての外だ。このへき地の遥か彼方よりもさらに奥深いのがキャットクローラーなのだ。それでは始めよう...」

日本語では、この文章で言葉遊びをする事は難しかったため、ここでは意味を分かりやすく伝えることに重きを置きました。2行目は2文に分け、SPADEを意味する鋤は『』を使うことで強調されています。全体的に古き良き指南書の語調を使い、実際にはくだらない文章を指南書らしく表現しています。これに続く文の翻訳では、少々遊んで、読みようによっては少々卑猥な訳になっており、それと合わせて読むとこの文章も...なのですが、それは「Kenshi 2」がリリースされた後にご確認ください。 - Meg

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